GLP-1受容体作動薬(リベルサス)・GIP/GLP-1受容体作動薬(マンジャロ)

GLP-1受容体作動薬

作用機序

GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)は消化管ホルモンの一種です。
①食物摂取により、②腸管から分泌され、③膵インスリン分泌をブドウ糖濃度依存性に増強させる因子インクレチンの1つです。その他の作用として、④胃からの食物排泄を遅延させる、⑤膵グルカゴン分泌の抑制、⑥脳へ働きかけ食欲を抑制するといった作用があります。以上より、血糖値を下げる効果はもちろんのこと、体重を減らす効果もあります。
また、大規模臨床試験では、心血管や腎臓への保護作用も報告されており、海外では心血管疾患や慢性腎臓病、心不全を患っている患者様だけでなく、そういったリスクが高い患者様にも積極的に使用することが推奨されています。

ただ、生理的なGLP-1DPP-4という酵素によって瞬時に分解されてしまいます。GLP-1受容体作動薬は、DPP-4に対して抵抗性を有する構造を有しているため分解されにくく、注射製剤としてエキセナチド、リラグルチド、リキシセナチド、セマグルチドなどのような毎日打つ製剤、週1回打つ製剤、基礎インスリンとGLP-1受容体作動薬の合剤など多くの種類があります。20202月、世界初の経口のGLP-1受容体作動薬であるリベルサスが発売され、注射製剤に抵抗がありGLP-1受容体作動薬を導入できなかった方にも使用できるようになりました。さらに、2023年4月18日、持続性GLP-1/GIP受容体作動薬である週1回の皮下注製剤であるチルゼパチド(商品名:マンジャロ)が発売されました。マンジャロは、既存のGLP-1受容体作動薬と違い、GLP-1だけでなくGIPの受容体にも作用する薬剤です。従来のGLP-1受容体作動薬の作用に加え、GIP受容体を刺激する作用が上乗せされることにより、既存のGLP-1受容体作動薬と比較しても、血糖及び体重減少作用の効果が強いという臨床試験のデータが出ています。当院では、2024年3月16日、第243回日本内科学会近畿地方会にて、全国に先駆けてマンジャロの有効性と安全性に関して学会発表をさせていただきました。

GLP-1受容体作動薬は、体重減少効果に加え、糖尿病治療薬として血糖値を下げることが目的の薬であり、正しい知識と数多くの使用経験をもった糖尿病専門医による処方が不可欠と考えられます。

糖尿病専門医資格を持っているかはこちらから検索可能ですのでご覧ください(堺市西区などで検索できます)。
http://www.jds.or.jp/modules/senmoni/

GLP-1の多彩な生理作用
(間接的作用を含む)

GLP-1は膵臓への直接的な作用だけではなく、膵外作用として、脳に作用し食欲低下、胃に作用し胃排泄運動低下をもたらし体重減少作用がある他にも心血管、腎臓、免疫系、骨格筋、褐色脂肪組織、白色脂肪組織、肝臓、腸などの様々な臓器へも作用します。

チルゼパチド(マンジャロ)

マンジャロは世界初の週1回投与の持続性GIP/GLP-1受容体作動薬です。GIPは主に小腸上部のK細胞から、GLP-1は小腸下部のL細胞から分泌されます。GLP-1受容体作動薬はインスリン分泌促進作用に加え、食欲中枢に働きかけ食欲を抑えたり、胃内容排出遅延作用により、血糖低下だけでなく体重を減少させる効果があります。一方で、GIPはGLP-1と同様にインスリン分泌促進作用はありますが、生理的な濃度では脂肪細胞に作用して体重増加を引き起こすことが知られています(図1)。

しかし、薬理学的な濃度のGIPを投与することで、食欲抑制を介して体重を低下させることが分かり、GLP-1単独よりも体重減少効果の強いマンジャロが開発されました。
また、食後のインスリン分泌に関して、約7割をGIPGLP-1が担い(残りはグルコース)、そのうち3分の2GIPが担うことが分かっており、血糖低下作用に関しても、GLP-1単独よりもマンジャロの方が強くなります(2)

マンジャロの用法及び用量ですが、通常、成人にはチルゼパチドとして週15mgを維持用量とし皮下注射します。ただし、週12.5mgから開始し、4週間投与した後、週15mgに増量します。なお、状態に応じて適宜増減しますが、週15mgで効果不十分な場合は、4週間以上の間隔で2.5mgずつ増量でき、最大用量は週115mgまでです。

打ち方は非常に簡単で、針を毎回変える必要がなく使い捨てであり、アテオスの名の通り、「当てて押す」だけのシンプルな注射手技となります。

マンジャロが発売されるまで血糖及び体重減少効果が一番強かったオゼンピック1mgと比較したSURPASS-2試験をご紹介致します。こちらの試験は、投与40週時までのマンジャロ5 mg、10 mg、15 mgを投与する群とオゼンピック1 mgを投与する群で比較しました。

血糖への効果

HbA1cは、マンジャロ5 mg群で -2.09%、10 mg群で -2.37%、15 mg群で -2.46%,オゼンピック群で -1.86%であり、マンジャロ3用量すべてがオゼンピック1mgに対して非劣性と優越性を示した(図3)ことより、血糖低下作用に関して、オゼンピック1mgよりマンジャロ5mg以上の方が効果が強いことが分かり、オゼンピック1mgを使用中に関わらずHbA1cが目標範囲内に収まっていない場合は、オゼンピックからマンジャロに切り替えることが重要であると考えられます。

体重への効果

体重に関してですが、マンジャロ5 mg群で -7.8 kg、10 mg群で -10.3 kg、15 mg群 で -12.4kg、オゼンピック1mg群で -6.2kgであり、HbA1cと同様にマンジャロ3用量すべてがオゼンピック1mgに対して非劣性と優越性を示した(図4)ことより、体重減少効果に関してもオゼンピック1mgよりマンジャロ5mg以上の方が効果が強いことが分かり、体重に関してもHbA1cと同様にオゼンピック1mgからマンジャロに切り替えることが有効であることが分かります。

次に副作用に関してです。

副作用

1つ以上の有害事象は、マンジャロ5 mg群で 63.6%、10 mg群で 68.7%、15 mg群で 68.9%,オゼンピック群で 64.2%であり、それぞれでほとんど差は認めませんでした。頻度の高かった有害事象は消化器系の事象であり、重症度は主に軽度~中等度でした(マンジャロ群、オゼンピック群それぞれ悪心 17~22%と18%、下痢 13~16%と12%、嘔吐 6~10%と8%)でした(図5)。低血糖(血糖値<54 mg/dL)はマンジャロの投与を受けた患者の 0.6%(5 mg群)、0.2%(10 mg群)、1.7%(15 mg群)と、オゼンピックの投与を受けた患者の 0.4%で報告されました。

当院では、GLP-1受容体作動薬を使用したことのない方から、リベルサスやオゼンピックなど既存のGLP-1受容体作動薬を使用している方まで、様々な方にマンジャロを使用していただております。また、当院では学会発表や講演会を通じてマンジャロの有効性や安全性をお伝えしておりますのでマンジャロにご興味がある方はお気軽にご相談ください。

現在発売されているGLP-1受容体作動薬
及びGIP/GLP-1受容体作動薬

一般名:エキセナチド
商品名
バイエッタ(アストラゼネカ) バイエッタ皮下注5μgペン300
バイエッタ皮下注10μgペン300
ビデュリオン(アストラゼネカ) ビデュリオン皮下注用2mgペン
一般名:リラグルチド
商品名
ビクトーザ(ノボノルディスクファーマ) ビクトーザ皮下注18mg
一般名:リキシセナチド
商品名
リキスミア(サノフィ) リキスミア皮下注300μg
一般名:デュラグルチド
商品名
トルリシティ(日本イーライリリー) トルリシティ皮下注0.75mgアテオス
一般名:セマグルチド
商品名
オゼンピック(ノボノルディスクファーマ) オゼンピック皮下注0.25mgSD
オゼンピック皮下注0.5mgSD
オゼンピック皮下注1.0mgSD
リベルサス(ノボノルディスクファーマ) リベルサス3mg
リベルサス7mg
リベルサス
14mg
一般名:チルゼパチド
商品名
マンジャロ(日本イーライリリー) マンジャロ皮下注2.5mg
マンジャロ皮下注5mg
マンジャロ皮下注7.5mg
マンジャロ皮下注10mg
マンジャロ皮下注12.5mg
マンジャロ皮下注15mg

 

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